こんにちは、鎌原です。
前々回記事
台湾には、高齢者が若者からデジタルを学び、若者が高齢者から知見を得るという発想を各所で重視しているそうです。筆者はそのような考え方が無くては、社会がどちらかに偏った設計になってしまうと危惧しています。
台湾では「青銀共創」という試みが盛んです。これは青年(青)と年配者(銀)が共同でクリエイトしてイノベーションを行っていくものです。要は、年配者と若い人がお互いに学び合うのです。年配者は若者から、「今のデジタル社会と、どうコミュニケーションをとっていけばいいか」を学び、若者は年配者の知恵や経験を学びます。私のいるラボ(社会創新実験センター)にも、そうした活動を行っている団体が入っています。
日本でも10万円の現金給付が実施されましたが、台湾でも振興三倍券という施策が実行されました。この券を利用すると3分の2が値引きやキャッシュバックされるので、自己負担金額の3倍分の消費が出来るというものです。
クレジットカードやQR決済のような若者向けに最適化された仕組みとともに、デジタルに強くない方の為に、商品券のような紙の券も配布対応しました。面白いことに、デジタルと紙面の利用割合は半々だったそうです。台湾の65歳以上の人口比率は約14.6%、日本は約28.7%ですので、決して高齢者比率が多いわけでは有りません。ということは、比較的下の年齢層でも紙媒体を選択した人たちが多くいたわけです。
筆者が述べているのは、もし「デジタル対応VSそれ以外」や「若者VS高齢者」という対立軸で物事や施策を考えるとどちらかを取り残すこととなり、社会全体で得られるはずの便益を減少させることになる。ということです。
つまり、先の「青銀共創」という発想無しに、デジタルもしくは紙の一択で施策を実行していたら、半分は取りこぼすか、不満が高まることになったわけです。
https://www.stat.go.jp/data/topics/pdf/topics126.pdf
『総務省:統計トピックス No.126』
この考えはとても重要です。コリブロではいつも書いてるのですが、なんでもかんでもITにすると、なんでもできるが故に使いづらいITができます。それよりも、「これだけは極上」といえるITの組み合わせや、紙との併用が最適解だったりすることがあります。
デジタルとアナログの棲み分けや、ユーザーと開発者の共同作業など大変学びの多い本でした。
今回でこの本については終わりにします。