こんにちは、鎌原です。
訪問介護業務には、やりたくてもやれない仕事、本当はやれないけどやらざるを得ない仕事が多くあると思います。
例えば、利用者ご家族分の洗濯や食事の用意、ペットの散歩や草むしり。例をあげれば切りがないです。
このような問題の難しさは、利用者ご本人やご家族が望むのはもちろん、ヘルパーさん本人も提供したいと思っている点です。
自分が提供可能なサービスがあり、それでお客様が喜ぶ事がわかっている場合、「やらない選択」は悪に見えるのです。
私もアプリ開発をしていて、このようなケースが多くあります。
このような選択に迫られた場合には、「長期的に考え、回り回って効果が高い選択」を意思決定するよう努めています。
例えば、ユーザーさんからある帳票がほしいと依頼があったとします。その帳票が自動出力できると、ユーザーさんの時間が大きく生まれる事が明らかだとしましょう。しかも、比較的簡単な開発で対応可能だったとします。
しかし一方では、サーバーの処理速度をコンマ数秒改善する。同時に処理可能な動作を少しだけ増やす。といった、ユーザーさんからは見えない地味な開発があります。これはプログラミングコードを全体的に書き直す必要があるなど、かなりの労力がかかることもあります。
私の個人的な感情では、今すぐにでも帳票出力機能を開発してユーザーさんに喜んでいただきたいと思っているわけです。
ところが、良かれと思って前者のような仕事を継ぎ接ぎで行い、後者のような仕事を後回しにすると、何か問題が発生したときに、大規模なクラッシュやバグが発生します。すると、Colibriが完全に使えないなど、ユーザーさんにとっては、帳票が出力できないことの比ではないほど、致命的なダメージとなります。
このように、「比較的簡単で、喜ばれることがわかっている仕事」と、「時間がかかり、地味で改善したことに気づかれもしない仕事」を瞬間的に判断することは難しいです。誤解を恐れずにいうと、前者に逃げたくなるわけです。
ですから、「長期的に考え、回り回って効果が高い選択」を後回しにしないよう努力しています。
訪問介護業務におけるやりたくても出来ない仕事は、介護保険上禁止されている業務なので、私の例とは異なります。
ただし、「この業務を行うことが、長期的にはどのような結果になるのか」という思考は共通するものがあると感じています。
ご存知の方も多いかと思いますが、鳥貴族という焼き鳥チェーンの大倉忠司社長のインタビュー記事の一部を抜粋します。勉強になる具体的な話ですので、ぜひ一読いただければと思います。
例えば入社を考えている従業員が周囲から「水商売は……」と言われることもありました。
ただ、そう言われても仕方のない時代もあったのが、事実です。例えば、営業中、お客さまからお酒をいただいて、飲んでしまう。こういうことが、当たり前になっていました。だから、やめさせていきました。これには従業員からも、お客さまからも反発がありました。お客さまは、良かれと思って勧めてくださっているわけです。しかも、これまでは受けていたのに、断らなければならなくなった。「この商売で、そんなん断ってたら成り立たんよ」と言われました。従業員も、「どうして勧められたのに飲めないんですか」と言われました。私が返したのは、「じゃあ、他の仕事はどうか」でした。「飲みながら仕事をしている人たちがいるのか。だから、いつまでも水商売と言われるんや」と。今はもう、従業員が仕事中に飲むことはありません。勝手にメニューを作らない、ということも取り決めました。お客さまから求められたから、とできる限りの要望を聞いてしまっていた時代もあった。しかし、こういうことも、きっちりマニュアルに定めて、やめさせました。一見、お客さまのためのように思えますが、一つでも店が対応すると、「あの店ではこんなことをしてくれたのに、この店ではやってくれないのか」といったトラブルになりかねないのです。店長が代わったら、「前の店長はやってくれたのに」といったことにもなりかねない。逆に、従業員の信頼やブランドを毀損するようなことにもなるわけです。